第4回:セキュリティ意識の高まりの影で……ITプロジェクトを崩壊させる「ベンダーの正体」

皆さん、こんにちは。株式会社リインフィット代表取締役の田邉です。
最近、経営者の皆様とお話しすると、必ずと言っていいほど話題に上がるのが「セキュリティ」です。大手企業のシステム停止や個人情報の流出事件が連日のように報じられ、もはやITセキュリティは現場任せの問題ではなく、重要な「経営リスク」として認識されるようになりました。対策予算を増やす企業も急増しており、この「守り」の意識が浸透してきたのは素晴らしいことです。
しかし、一歩進んで「自社の業務を効率化しよう」「新しいサービスを立ち上げよう」というITプロジェクト(攻めのIT)に目を向けると、相変わらず「ベンダーに任せておけば安心」という過信から、手痛い失敗を喫する企業が後を絶ちません。
前回のコラムでは、失敗の原因が「依頼側(自社)」にあるパターンをお話ししました。しかし、どれだけ自社が歩み寄っても、選んだパートナー(ベンダー)に問題があれば、プロジェクトは必ず沈みます。
今回は、ITプロジェクトを失敗に導く「ベンダー側の責任」について、最近の風潮であるフリーランスのリスクや、ドキュメント軽視の実態も含めてお話しします。
「専門家だから」と信じた結果……。ベンダーが引き起こす失敗原因
ITベンダーは技術のプロですが、中には「納品して終わり」と考え、企業の継続性を一切考慮しない不誠実なケースも存在します。
1. スキル不足と「人月商売」の罠
契約時には優秀な営業が出てくるのに、実際に開発が始まると、経験の浅いジュニアエンジニアや、多重下請けの末端にいる要員ばかりがアサインされるケースです。スキル不足のチームは設計ミスを連発し、納期直前になって「できませんでした」という報告を上げてきます。
2. フリーランス活用に潜む「失踪」と「ブラックボックス化」のリスク
最近ではコストを抑えるためにフリーランスに直接発注するケースも増えていますが、ここに大きな落とし穴があります。
- 連絡が取れなくなる
- 進捗が悪くなると、プレッシャーに耐えかねて突然音信不通になる(いわゆる「飛ぶ」)ケースが後を絶ちません。
- 個人に依存する危うさ
- 組織的なバックアップがないため、本人の体調不良や環境変化でプロジェクトが即座に止まります。
3. 「設計書を作らない」という最大の負債
極めて悪質なのが、「動けばいい」と言わんばかりに、設計書(仕様書)を一切残さないベンダーやエンジニアです。
- メンテナンス不能
- 設計書がないシステムは、中身がブラックボックスです。後から修正したい時や、別の会社に保守を依頼したい時に、誰も中身を理解できず「作り直すしかない」という最悪の事態を招きます。
- 資産として残らない
- 会社がお金を払って作ったのはシステムという「資産」のはずですが、ドキュメントがないことで、それはいつ壊れるかわからない「時限爆弾」へと変わります。
4. 「できます」という安請け合いと、リスクの隠蔽
コンペに勝ちたいベンダーは、無理な納期や予算にも安易に「可能です」と答えます。そして、取り返しがつかなくなるまで不都合な真実を隠し、最後に爆発させます。
失敗しないための「パートナー選定」3箇条
ベンダー側の責任とはいえ、その相手を選び、コントロールするのは経営者の役割です。
- ドキュメントの納品を契約で「必須」にする 「動くもの」だけでなく、基本設計書、詳細設計書、マニュアルの納品を契約書に明記してください。これがないと、そのベンダーに一生人質に取られることになります。
- フリーランスや小規模ベンダーには「組織力」を確認する 個人に依頼する場合は、過去の実績だけでなく、万が一の際の連絡体制や、ソースコードの管理(GitHubなどでの共有)が自社で把握できているかを確認しましょう。
- 「No」と言ってくれるパートナーを選ぶ 何でも「できます」と言うベンダーより、「そのやり方は将来的にメンテナンス性が下がります」とはっきりリスクを提示してくれる相手の方が、長期的には信頼に値します。
経営者の皆様へ:ITは「外注」できても「責任」は外注できない
セキュリティ対策もITプロジェクトも同じです。ベンダーはあくまで道具を提供してくれるパートナーであり、その道具を正しく選び、管理する最終責任は経営者にあります。
「ベンダーが何も残さずにいなくなった」と嘆く前に、「何が成果物として必要なのか」を正しく定義できていたか。 ITリソースが自社にないのであれば、ベンダーを監視・コントロールするための「第三者の目(外部PMやIT顧問)」を入れることも、失敗を防ぐための賢い投資です。
今回のコラムを通して、不誠実な業者に振り回されないための向き合い方を再考するきっかけになれば幸いです。
次回は、ITプロジェクト成功の鍵を握る「要件定義」の本質について。なぜ要件定義で全てが決まるのか?をお話しします。どうぞお楽しみに。

